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現代詩

隣人家の崩壊

長谷川航

詩人

隣人の遺跡
ぼくたちの遺跡
ぼくたちはそこに収容された
国道4号線沿いの白い家
排気ガス
壁は
灰色の汚染

玄関先には化け物のような紫陽花
入口を塞ぎ
舗装を剥いで根を張った

排水溝のヘドロ
汲み取り式の便所
床下の腐敗

風呂とトイレの電気は黙って
闇を祝福した

天井裏には獣
弱い人間を嗅ぎつけて

ぼくたちを蝕む
狂気の結界

3.11のあと
隣人は去った
結界のない遺跡

ぼくは相続した
このおぞましい遺跡を

シンゾクは法外!!
キョウセイダイシッコウ!
フホウシンニュウ!

遺跡は
イメージの起源

友がシールドに
法を武器に戦った
手もとに残ったのは
カネと戦いのアルシーヴ

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現代詩

喪の終止符

長谷川航

詩人

あのひとはたしかにいた
あのひとはこの世界に殺された
あのひとは地上の天使
ただ存在だけがあった
存在には愛があり
身体があり
顔があり
名前があり
匂いが
……

なぜ詠まれることでしか
存在は救済されないのか
なぜ詠まれることで
救済が殺しになってしまうのか

屍に囲まれて
いまだ詠む

この身体に刻まれるアルシーヴを
爆破しろ!!

嗚呼、
こちらへ

私の代わりに
詠ってほしい
この詩を

そして
私を葬ってください

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現代詩

パロールの掟

長谷川航

詩人

あなたはプリンスで
隣人と二人

あなたと隣人は一つ
井戸の底

見上げた あなたの目は
青になった
隣人は俯いたまま

あなたの目は青に囚われて
井戸の外

掟を破ったのはあなたじゃない
隣人は色彩を奪われた

掟を守り
あなたは詠う

掟破りの隣人は
井戸の中
声の反響だけが
井戸の外