桜井夕也
ゆれていて、かがやいて、やがてきえるから。空だけが残って シリウス
そして雪が降り、降り積もり、千年後また雪が降り、降り積もるだろう
遠雷と花弁 星のたましいにひかりを灯す とても遠くて
あなたという洗礼が花の名前を言いそびれた 微熱の海に音を忘れる
そう、それはたぶんユリイカ 空には光がなくて星座のままで
咲き誇ってよ薔薇 吾も汝もいない場所で 朝が閉じている星の声を聞いて
夏のサイダー一気飲みしてペルセウス流星群が鳥葬される
遠い誰かに手紙を出すように花瓶に水を差す たとえば夢 たとえば雪
昼寝したペンギンの税はアカシアで飛行機雲をずっと見ていた
クッキーを重ね着してる銀色の海の向こうにだれかいますか
王冠が卓球をする陽だまりにaloneのnがさびしそうで
ピンク色の象がいつでも空を飛ぶ淡い被写体としてデラシネ
濁音が群生をするわたつみの流線形がカシオペアと会う
とうめいな石楠花の花が壊れてる宝石箱にひろがってゆく
14のリサ、アルデバランを指差していぬのしっぽを鍵盤と言う
まだ遠い場所であなたは銀色の喇叭を鳴らす祝婚として
さようなら兎 さようならアニエス・ヴァルダ 手のひらに降るひかりの翼
金雀枝一面の野にきみが咲いた ひだりききの天使がきれいだ
夏至の日にルカ、笑ってよ 長いことぼくらはずっと森だったから
水鳥の音色を探せばあかときのヒヤシンスになれるからだから