草間小鳥子
詩人
求めるものが
知識では補えないことを知り
噴水を見ている
繋がれた犬も噴水を見ていた
(素晴らしい動物だ
目の前にないものを怖れない)
犬は花梨の幹に繋がれている
花梨の枝には賢い目をした百舌がいて
百舌を横目に若い猫が風を嗅ぐ
わたしたちは
生産性ではかれない生き物
他者との価値の交換で生きる
矛盾した有機物
足早に行き過ぎるひとの靴音に責められ
それでも
向かい風をただ逃がす
考えない肢体を肯定したいと思う
犬と木と鳥と猫とならんで
見えない部分へ耳をすます
やまない水音
かけがえのない暇
たったいま
遠くでとどろいた
透明な銃声 晴れた日